オーナー：桔梗
出没時間：夕方〜真夜中
お品書き：珈琲・ビフテキ・ソォダ水...etc。

物書きさん。
この店で雑談・猥談・討論・自説披露（置き文）していきませんか。

『宣伝のみのご来店、固くお断わり申し上げ候』

ご自由に、うろつき回って下さい。
この店が、物書きさんの休憩処となれますように。

『文学専門カフェ』

―営業、再々開中。
文士よ、集え。


常連客である瑠惟さまや、気鋭の若手画家２人、そして初めて訪れてくださった美しき親子…。

普段なら仕入れや雑用は小間使いさんか可愛い女給さんにやってもらうのだが…。

小間使いさんは、若い画家にモデルをしてはくれまいかとせまられているし、女給さんはお客様にひっぱりだこ。

（どうしようかな？）

店を空けていた間に、色々と足りなくなってしまったものがある。

たとえば布類。

これは、高級な家具や食器などに使用するのだけれど、強制的に実家へ連行されてしまった時点で数量がわずかとなっていた。

すぐ帰ってくると言いおきながらも、『もしもの時は家でゆっくりしているといい…』店の事は気にせずに。

そう女給さんと小間使いさんへ言いわたしておいたものだから、現在、布類をはじめ様々な物が足りなくなりつつあるのは当然のなりゆきだろう。

「オーナー！助けてくださいー」と、瞳で必死に訴えている小間使いさんに対し無慈悲な言葉を楽しげに。

「大丈夫、Reyさまは君を悪いようにはしないから安心してモデルとなりたまえ。私も楽しみだな」

使用人の懇願を、ふふっと独特な微笑で受け流し。

「私は少し外へ行ってくるよ。足りなくなりそうな物を購入しに、ね」

「だから、後は頼んでもいいかな？」

君たちの代わりに、とか何とか言ってはいるが、ようは息抜きをしたいだけのオーナー桔梗。
賑やかな…好みの女性と可愛らしい子が店を後にしたのち。

よう様とReyさまへ艶やかな微笑を送り。
従業員にだけわかる、『出かけてくる、あとは任せたよ』と目と目の合図をして、オーナーは喧騒のただ中へ優雅な足取り。

（なんだか短期間のうちに色々あったねぇ）

薄闇が空を飾る頃。
煙草と白粉、汗や酒のにおいにつつまれた雑多な界隈は夜の始まりを告げ知らせる。

昼から夜の淫らな顔へ。


おもて通りを少し奥。
突き当たりにあるモダンな建物。

『文学専門カフェ』

圓タクを拾い、何を思ったかオーナー桔梗。
（ちょっとだけなら寄り道もいいよね、女給さん？）

足りなくなるという布は、後まわし。
久しぶりに他の…いかがわしいカフェーへ繰り出そう。


車内には運転手がひとり。
そして、私。

「ねえ、君も一緒にどうだい？」

一緒に、罪にまみれてみるのもいいと思わない…？

瑠惟さん、浴衣とってもお似合いです！
藍色の襟元から覗くうなじが凄く艶っぽいO(〃∀〃)o

そうそう、オーナー。テーブルと椅子を外に出して使っても良いですか？
Reyさんの占いでオープンカフェが良いと出たので。

こんばんは、恋歌さん。
もう帰られるんですか？この次はもっとゆっくり、いっぱいお話しましょうね(^^)

「桔梗さん、いらしたのね。
また女性を口説いてたのかしら（笑）」


うっすらと笑みを浮かべ…女給さんを見つめた。


「ひかる、これを飲んだら帰るわよ」

「嫌だ！まだ帰んない」

「仕方ないわね…」
ふーっと、ため息をつき
「ではお祭りに行きましょう」


アイスティーを飲み干し
「皆様、騒がしくて、すみませんでしたわ。
また、いずれ、お逢いする日まで…ご機嫌よう」

席を立ち、軽く会釈をしながら…。

『文学専門カフェ』

―小間使いさん目線編―

棚をふきふき小間使いさん。
カララ〜ンとドアの音ひびかせて、大小の影に目を細め。

（…ん？お子様連れのお客様？）

珍しい。
というより、この治安の悪い界隈に子連れで身重なご夫人が訪れるなど、天地がひっくり返る珍事と言える。


さて我らがオーナーはというと…。

「あ…」

（…いけない）

小間使いさんは留守をしていた間の汚れをはらい、来店したお客様に釘付けとなっているオーナーを横目で見つめ…。

（いけない）

昨今の若い男は、時代の流れか分からぬが危険な恋に身を投げ出しやすい。

自分のような一定の年齢に達した者なら話は別だが…このカフェーの主人は美しいもの美しい女人美しい書生や画家などが大好きなものだから、いつも色々と困った事になってしまう。

Rey様：
「私は小間使いさんもモデルにしてみたいんだけど」

いつの間にか、小間使いさんのそばには人気の画家。
それはどうもと、さり気なく距離をおき相打ちをうつべきか。
それとも恐れ多いと辞退すべきか…。

オーナー桔梗：
「ようこそ。いらっしゃいませ、マダム。初めまして、私はこのカフェーの主人、桔梗と申します。おや。可愛らしいお子様も、いらっしゃいませ小さな紳士どの。お母上とご来店くださり、まことに嬉しく思います」

大きなお腹のご婦人の手を取り、恭しく口づけを。
小さな紳士には目線を合わせて静かな微笑み。
そうして招くように近くの席へと…。

「女給さん。自慢の飲み物をお出しして」

かたやモデルになってはくれないかと迫られている小間使いさん。
自分なんか描いてはお客様の品を損なってしまいます。
どうかご容赦をと、あれこれ逃げ道を探している様子。

（なにせ自分はオーナーの生家からの使用人。オーナーの父である大旦那様とは、年もさほどかわりは無い）

なのに、この年若い画家は…。

女給さん：
「お待たせいたしました」

新たな来客であるお二人へ所望の飲み物をテーブルへ。
いつも無表情な女給さんではあるけれど、身重なご婦人と小さな坊やに気を使っているのだろう。
口調がほんの少しだけやわらかい。

Rey様：
「小間使いさん、そう自分を卑下しないでください。あなたは充分私の感性を刺激してくれる雰囲気をもっていますよ」

終始笑顔の青年に、どうしたらよいかと、小間使いさんはオーナーへ視線をむけて助けを求めた…。

「凄い風でしたわね…」


カラン♪という扉の音と共に…お腹の大きな女性と男の子が…。


「ママぁ、僕ジュースぅ」ねだる男の子を「はいはい」と。なだめながら女性は話を続ける


「桔梗さんやReyさんから聞いてたとおりだわ。
ようさん、琉惟さんですね？お噂は常々お二人から伺っておりますわ。はじめまして。私、恋歌と申します…あっ、この子は息子の、ひかるですわ。

あら、紗歩さん。ご機嫌いかがです？少しお疲れ気味では？」


一通り挨拶を終えると席に座り、ジュースとアイスティーを頼んだ。


「あら？
女給さん、桔梗さんは、また雲隠れ？」

…台風ですね。


風の強くなった帝都の夜。
カラン…
ベルを鳴らして扉を潜り、ふぅ。と溜息をひとつ。


オーナー、お久しぶりです。少し痩せたんじゃないですか？


にこやかに手の平を広げて指を振る。


それにしても嬉しそうじゃないですか。
何かあったんですか？オーナー。

あ。
可愛い女給さん、今日はミルクたっぷりで珈琲を頂けますか？


見目麗しい女性二人とオーナーの間に割って入りながら、女給さんに笑いかける。


さぁて…。
延長戦と参りましょうか…？

とある美しい御婦人より秋祭りがあると伺いまして、ね。

ご一緒にどうです？
勿論、皆様で。
面白いものが見れますよ、きっと…。
ねぇ？
小間使いさんv


オーナー程ではないにしろ実はいい男。


…ふっふっふ。
(先日のお礼を兼ねて一枚。描かせて貰えませんか？)

『文学専門カフェ』

―営業再開中。


ちょっとオーナー！
私たちがどれだけ心配したと思っているの！？
しかも毎日、
『今日こそはおられるかしら？この藍色の浴衣を着た私を見たら、可愛い女給さんなんか目じゃなくなるはずだわ』
そう胸を高鳴らせ通っていたというのに、なんですの！
女に恥をかかせるなんて、紳士としてあるまじき事よ。

そうよそうよ。
オーナーの馬鹿、トンチキ、おっちょこちょいの女たらしー！


（…え。そんな、酷い）


二人の女性客に詰め寄られ、思いとは裏腹に嬉しそうなオーナー桔梗。
そんな姿を横目で見ながら女給さん。

「………」

無言でお客様へご注文はいかがなさいますかと、心なしか声が低い。


瑠惟さま：
「お祭りは終ってしまいましたわ。いいえ、正確にはもうすぐ終ってしまいます。オーナー、女給さん。私とのお約束は？」

オーナー桔梗：
「もちろん、ご一緒させてください瑠惟さま。こんな美しい女性と時をすごせる私は果報者です。ねぇ…そうは思わないかい、君たち？」

声をかけた向こうには、窓にへばりついたむさくるしい学生たち。

カフェーといえば、破帽にマントな姿がたいてい大声で喧嘩ごしな論議を繰り広げるものだが…、この文学専門カフェには何故か入ってはこない。

いや。違う。

入ってくるなと追い出されるから、めっきり姿が減ったのだ。

悲しいかな、窓にへばりつく事だけは許されているから、シャン（美人）な姿をひとめ見ようと寄ってくる。


オーナー桔梗：
「よう様、本当にご心配をおかけして、思わず胸が高鳴ってしまいました。だから…そう。お詫びに女給さんとすごす祭りの権利をお渡しします」

ただ、私たちも後ろから連立っていくはご容赦を。

（意味がないと思わせてはならない。言質を取れ、私！）

「ね？祭りにご一緒していただけますか？その美しい顔を皆に見せびらかしたいです」

無類の美形好きなオーナーは、まるでこの世の中心は自分たちであるかのように両腕を広げ、赤いくちびる微笑を浮かべる。


そんな騒がしい様子を、少し離れた場所から小間使いさん。
うちの主人は話をずらすのがうまいもんだと棚をふきふき感心しきり。

雨雷であったという瑠惟さまの言葉に「こちらもでした。実家がね…まるで本当に豪雨雷雨が凄くて」と嘘かまことか分からぬ戯言。

月が薄闇に光る頃。
今日も狂乱の世界は煙草を片手に笑い続ける…。

オーナーさん･･･今までどちらにお出でだったのですか？
私オーナーさんに見てほしくて新調した藍色の浴衣をほぼ毎日着てここへ来ていたのですよ？まぁ会えたからよしとしますが･･････どうです？私に藍色の浴衣は似合いますでしょうか？

夏もそろそろ終わりでしょうか？

こちら、今日はいきなり雨雷が酷いです･･･皆さんのところは大丈夫でしょうか？

おはようございます、オーナー！
皆心配してたんですよ。
でも良かったです。お元気そうで(^^)

『文学専門カフェ』

―営業再開中。
文壇の志士よ、集え。

半月以上もそのままにしていたというのに、不思議なほど綺麗な店内をみつめ、オーナー桔梗。

（…きっとこれは）

そう。
きっと我が親友の『R』がつく若い売れっ子画家に違いない。
「なんて良い人なんだ、あなたって方は」と、愛情をこめて抱きしめよう。

ふっふっふ、と怪しげな笑いを押し殺しているオーナーの耳に、カララ〜ンと来訪を知らせるドアの音が！

逆光で姿はよく見えないけれど、あの雰囲気は…。


ようこそ。
いらっしゃいませ、紗歩さま。
ながらくカフェーを休業していた私をお許し下さい。
全て貴女の好きなように…美しい人。

白い手を取り口づけし、妖艶なる美女のそばに腰掛ける。
今年の夏は暑くて暑くて、日中いちばん照り付ける時間帯は、ご婦人方の姿がパッと消えていました。

紗歩さまも大丈夫でしたか？


よう様。
いらっしゃいませ。
カフェーがただでさえ暗いのに、ひとけも無くて申し訳ございませんでした。
ちょっと無理矢理…『縁談とカフェーなんぞやめてしまえ、子爵家の跡取りが！』…と、とうとうきれてしまった方がおりまして。

監禁されておりました。


瑠惟さま。
ようこそ、いらっしゃいませ。

結婚してくださるですか？美しい方。
（あれ？でもそれは瑠惟さまではなく、ご兄弟との見合い話！？）

美しい人。
あいにく私は、破帽をかぶっていました学生時代から硬派（男同士の恋愛）者ではなく、軟派なほうでありまして。しかも結婚となりますと…『忍ぶ愛』となってしまいます。

それよりも私は、瑠惟さまと朝まで語り合いたいのです。
互いを見つめ合いながら、ね。


Reyさま。
いらっしゃいませ…というよりは、お礼を言わせていただきたい。

「…小間使いさんもグルですか！」

ではなくて。
私のいない間、このカフェーを掃除してくださったとの事。
感謝でいっぱいです。


皆様と女給さんと浴衣を着て、夏を満喫したかったのに惜しい事をしました。

（見たかった、艶姿…）


帝都は今日も夜に朝に昼間にと、騒がしい一日が人々を包む。
夏の暑さもおさまりつつある８月のある日。

洋装紳士と淑女の二人づれ。
稽古帰りか、急ぎ足の半玉娘。
デカンショ節も声高く、マントをひるがえし闊歩する学生たち。


夢をむさぼる闇の帝都は、今宵も人々を惑わし続ける…。

『文学専門カフェ』

―営業再開。


なんとか実家から戻ってきたオーナー。
どうやって父を説き伏せたかは、微笑む彼の胸の中。

「女給さん、小間使いさん」

一日前にカフェーへ帰宅する旨を二人の家…と言ってもすぐ近くなのだが…に知らせておいた。
こんなに長く留守をするつもりはなかったんだ。
それもこれも、あの父上が悪い。

自分のことは棚にあげ、オーナー桔梗は二人の足音と「お帰りなさいませ、旦那様（オーナー）」の声に店の奥へと顔を向けた。


本当に悪かったよ。
女給さんをお客様と祭りへ連れて行くと約束していたのに、ねえ…可愛い女給さん。
あまり、怒らないでくれないか。
私は悲しくて死んでしまいそうだよ。


小間使いさん、君にも本当にすまなかった。
綺麗な奥さんとはゆっくり幸せな時を過ごせたかい。
…え？
いくらカフェー休業中の特別給金を多くもらったからって、家でゴロゴロしているなと怒られたって？

「本当に申し訳ない」


ところで、君たちは休業してから私の言いつけ通り、今までカフェーへは入らなかったんだよね？

それにしては店内が綺麗すぎるように思うんだけど…。

「もしかして？」

『オーナー、軟禁』

大丈夫、心配しないでおくれと文学専門カフェーから少し離れた場所にある子爵家へ向かった、オーナー桔梗。

圓タクを乗り継ぎ、久々の帰郷だというのに、ため息ばかり。


父上は私の品行方正とは言いがたい生活に、とうとう頭に血がのぼったのかもしれない。
ここまで自由にしておく方もどうかしているけれど。


（…しかも長男）


社交会へ全く興味を示さず、華族としての意識も全く無いオーナー桔梗。
まず母上と話をし、父上のご機嫌をとりながら話題をさり気なそらしていこうか。

（あ…そうだ。たしか父上には、よそに女性がいたはず）

皇族出身である母上は、病弱ながら静かな嫉妬にかられている事だろう。

男が愛人を持つのは一種『当たり前』な事だといえ、妻として迎えられたのは皇族から異例…と言えるだろうか…な嫁下をされた、尊き女性。

父上としては機嫌を悪くして欲しくないに決まっている。

（この事をお祖父様に…）

いや。

ふふ、そこまで父上を追いつめてはかわいそうかな。

（ふーむ）

実家へついたとたん、使用人用として使っている部屋へ押しこめられ、はや数時間。


（女給さんは今頃どうしているかな…）

『文学専門カフェ』

―休業中。


今月上旬。
オーナーは、いきなり実家へ戻され軟禁状態に。

カフェーを出るとき女給さんと小間使いさん二人に、
「大丈夫さ。心配しないで。遅くとも明日の夕方までは戻ってくるから、それまでカフェーを頼んだよ？でも、もし…」


でも『もしも』の時は、私が帰ってくるまで久しぶりに故郷へ遊びに行ってくるといい。


ああ、それと。
店はこのままの状態にしておいてくれないかな。
ふふ。だってね？
休業を知らせる紙も貼らずにいたら、きっと私を愛してくれている紳士淑女たちが心配してくれるだろうから。


オーナー桔梗は楽しそうに微笑んで、カフェーの鍵を入り口付近の金具へ。

物取り殺人は日常茶飯なこの界隈。
それはいくらなんでも不用心だ。
女給さんと小間使いさんは「…それはちょっと」と困り顔。



『ん？大丈夫、大丈夫』


意味あり気に微笑み浮かべ、サッと身支度を整えドアの向こう。

…女給さんの肌が恋しくてたまらなくなるだろうけど。
我慢するよ…愛しい人。
もし私の留守中、男たちが誘いにきたとしても、可愛い女給さん。貢がせるだけにしてくれないかい？


甘えた声をドアごしに。

「必ず早く帰ってくるから、ね？」

あらあらオーナーさん･･･私一言も結婚等とは申しておりませんよ？

オーナーさんがご結婚を望まれるのでしたら私の弟でも連れてまいりましょうか？それとも頼れるお兄様がよろしいですか？

とりあえず･･･オーナーさん、今年の夏は女中さんも連れて浴衣祭を致しましょうね��


ようさん>藍色･･･実を言うと私赤と桃色しか持ち合わせておりません･･･今年新しく新調しましょうかしら？

…さて、と…。


手にした鍵をカチャカチャと空中で遊ばせながら、ギィ…と裏口扉を開け、薄暗い店内へと堂々と足を踏み入れ辺りを見回す。


(小間使いさんから鍵巻き上げておいて良かった、良かった…)


薄いカーテンの向こう側。通りに面した窓から差し込む街灯の明かりを頼りにカウンターの上に指を滑らせる。


(…掃除もしてない、か)


薄く積もった白い埃に軽く指先を擦り、ベルの吊るされたカフェの正面扉に目を移す。


…オーナー…。

まさか本当に女給さんと駆け落ちしたんじゃ…！！


自宅すら、もぬけの殻。


…って、そんなわきゃーないですか。
とりあえず…掃除でもしておきますよ、オーナー。


かたん、

カウンターに鍵を置き、いつも女給さんが使っていた台拭きに手を延ばしてちょっと笑った。

こんばんは(^O^)

え、オーナーさん夏バテなんですか？冷たい物でも食べ過ぎました？
まさか食あたりなんてこと…ないですよね？

(それとも夜遊びのしすぎとか…)

オーナーに元気がないと店内が暗くて寂しいですよ。

こんばんは。ご無沙汰しております。
光陰矢の如くとはよく言ったもの。ぼんやりしているうちに、あっと言う間に時間が過ぎてしまったようです。


あら、桔梗さまは夏バテですか？女給さんに看病してもらうだなんて羨ましい方ですね。
でも、私も女給さんと銀座巡りするお約束をしてますから。そのときは桔梗さまに見せつけさせて頂きます♪


Reyさま、素敵なお中元ありがとうございました！
夏の楽しい思い出が送られてくるなんて思いもよらず、とても嬉しかったです！
肖像画、楽しみにしております♪


皆さま、まだまだ残暑厳しいようです。お身体ご自愛くださいませ。

『文学専門カフェ』

―営業中。
文士よ集え。


よう様。
ええ、一緒にお祭りへ行きましょう。約束です。

（ふっふっふ。両手に花、だね）

美しい声をあじわいながら、私は童心にかえったように屋台へ踊りへ太鼓へと足を運ぶと思います。

「その日だけは、よう様。私だけのものになってくださいますよね？」

画家の手を取り口づけて、オーナー桔梗は愛しそうに微笑みを。

美味しいお茶をありがとうと美麗な画家。
約束ひとつを残しドアの向こう。
夜の帝都、喧騒の中へまぎれゆく…。

「またのお越しを、お待ちしております」


―そして、数日。

常連客である画家Reyは、ただでさえ人気の薄いカフェーの前へ立ち寄ると、怪訝な顔で眉を寄せる。

おかしいな…。
音がしない。
オーナーの甘えた声も聞こえてこない。

（はて？）

窓にへばりついて店の様子を伺う…なんて格好悪いことはせず、鋭い洞察を働かせ「なるほど」と一人うなずく若い画家。

『あのオーナーは陽に弱いのだ』

おそらく店の奥を私物化し、ソファーに横たわっているのだろう。
もともと『甲』な身体ではないようだから、仕方がない。
そこへつけこみ、可愛い女給さんに看病をねだっているのではなかろうか。

（…うらやましい）

いつも余裕しゃくしゃくな美貌が一瞬だけ悔しそうに歪む。
お中元を贈るか迷っていたが、やめようか。

いや。それはいくらなんでも大人気ない。
適当にみつくろって『文学専門カフェ』宛に贈ってあげよう。

そんな事を考えながら、若い画家は表通りへゆっくりと。
真夏の帝都を軽やかに。
優雅な足どり、道をゆく…。

…。

おや〜？？


少し奥まった路地。
人気の無い店の中を窓の隙間から眉を寄せて覗き込み、明かりの見えない店内に首を傾げながらくるりと振り返る。


（日光に弱い方だからなぁ…）

まぁ、仕方ないか？


傾けていた首を真っ直ぐに戻し、手にしていた白い封筒を店の入り口の隙間から、ほい、と押し込む。


さあて…。

それじゃあ、お中元でもお届けに参りますか。


石畳の上をかつかつと。
天上の星の床を眺めながら表通りへ。

ではオーナー、約束ですよ？皆でお祭りに行きましょうね！

では私はそろそろ家に帰ります。
美味しいお茶、ごちそうさまでした(^O^)／~